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About Koichi Murakami

2019年へ、サバイバルマッチ始まる

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前回のコラムを書いて、いつのまにか9カ月が経過したのは驚きだった。この間、日本ラグビーを取り巻く環境は激変した。筆者自身もこれまでにない仕事の依頼が舞い込み、東奔西走した日々だった。日本代表がラグビーワールドカップ(RWC)2015で3勝1敗という好成績を上げたことで、世間の関心も高まり、五郎丸歩はじめ、日本代表選手の多くが海外の強豪クラブでプレーするようになった。日本チーム「サンウルブズ」のスーパーラグビー参戦。4月23日には歴史的初勝利。リオ五輪へ向かっては男女セブンズ日本代表が最後の仕上げ段階にある。
そんな中、新生・日本代表がアジアラグビーチャンピオンシップ2016第1戦で韓国代表を85-0で破った(2016年4月30日)。RWC2015以来の日本代表戦だったが、その時のメンバーは一人も含まれていない。日程的に、海外組、サンウルブズの主力、セブンズ日本代表を除いてメンバー編成されたからだ。 韓国代表戦を終えて選手に話を聞いたが、皆、日本代表定着への熱い想いを語っていた。南アフリカ代表を破るなど歴史的勝利を成し遂げ、全世界の人々に勇気を与えた日本代表は、かつてない憧れの対象になっている。
昨年のRWCメンバーから直前で漏れた村田毅は、韓国戦で後半出場ながら激しいプレーで存在感を示した。「まずは(膝の怪我から)復帰して試合ができたことを喜びたいです。(6月の日本代表入りに向けては)試合数が少ないので、とにかくアピールしたい。ようやくスタートラインに立てた気がします」。村田はサンウルブズのメンバーでもある。

昨年までの日本代表、所属のNECグリーンロケッツ、サンウルブズ、今回の日本代表と、次々に違うコーチの下でプレーする。「短期間でチームを転々として、新しいサインを覚える。こんな経験はなかったです」。コーチの考え方、選手への伝え方、戦術などはそれぞれだ。いま、日本代表を狙う選手達には違ったチーム環境の中で自分の長所を出して競争に勝ち抜く柔軟な対応力が求められている。
2019年のRWCの日本代表に2015年のメンバーはどれくらい残るだろうか。31名中引退を表明したのは廣瀬俊朗、クレイグ・ウイング。トンプソン ルークも代表からは退くと公言している。年齢的、あるいは抱えている怪我の状況など考えて、この他、6~7名は難しそうな選手がいる。だとすれば、新たに加わることができるのは、10名ほどだろう。FW第一列は稲垣啓太、三上正貴、堀江翔太、木津武士ら大半が残るし、リーチ マイケル、ツイ ヘンドリック、アマナキ・レレィ・マフィのFW第3列は世界屈指の突破力、運動量に経験値を兼ね備えた看板トリオになりそうだ。
手薄なポジションは、FW第2列のLO陣、BKのCTB、FB。競争が激しくなりそうなのは、人材豊富なSH、WTBあたりか。サンウルブズのSHであり、韓国戦に後半出場した井上大介に今回の日本代表とサンウルブズの選手の差を聞いてみた。「コンタクトの強さには差がないです」。差があるのは、ボール争奪戦で相手を確実に倒してディフェンスの人数を減らすなど、「相手にすれば嫌なプレー」だという。アジアでの戦いを経て、6月にカナダ、スコットランドと対戦する日本代表には誰が残っているのか。目の前の勝負の一つひとつを楽しみたい。