11年目のトップリーグ、関東の大学ラグビーなど、次々に国内リーグも開幕し、9月29日からは関西大学Aリーグも開幕する。9月24日、大阪市・梅田で関西大学Aリーグのプレスカンファレンスがあった。各大学の代表者と、キャプテン集って、今季の抱負など述べたのだが、この会見で、関西ラグビー協会の坂田好弘会長から同協会としての新たな制度導入について発表があった。詳細は高岡義伸理事長が紹介した。
新たな制度とは、試合の判定などに疑義のある場合、当該チームが関西協会に映像と質問文書を送り、協会が正式に回答する「検証申請制度」である。対象は、関西大学Aリーグ、トップウェストAリーグの公式戦。これまでにも、各チームが判定に対して協会に疑義を申し出ることはあったが、協会側が確実に回答を出すという制度を作るのは初めてのことになる。
この制度は、昨春より会長に就任した坂田好弘氏が導入を推進し、同協会のレフリー委員会(田中伸明委員長)が応じて実現した。競技規則の適用がレフリーに委ねられているラグビーでは、判定に対するクレームはタブー視されてきた。常に激しくボールを奪いあうラグビーは、混沌とした状況が多く、野球の「アウト、セーフ」のような明確に線を引く判定は少ない。レフリーが見る角度によって、どうにでも判定できる局面が多いのだ。だからこそ、原則として「レフリーは絶対」という考え方が守られてきた。いちいち文句をつけていては、ゲームが進行できないからだ。
一方で、「ラグビーのレフリーは警察官ではなく、演出家」という言葉がある。主役は選手であり、ルール通り杓子定規に笛を吹くのではなく、臨機応変に規則を適用して選手達を安全に楽しくプレーさせましょう、というレフリーへの戒めの言葉だ。つまり、選手、レフリーが互いに信頼し合って、ゲームを進行するのが理想なのである。しかし、一つの微妙な判定、あるいはミスジャッジによって勝敗が決まってしまうことがあるのも事実。コーチや選手は、判定への疑問、不満を持ちながら、レフリーの判定を尊重するラグビー精神とのはざまで悶々とした日々を過ごしてきた。「検証申請制度」は、互いの意見を出し合って、ルールの理解を深め、コーチ、レフリー、両方のレベルアップを目的としている。
記者会見では、チーム関係者から「レフリーの傷のなめ合いにならないように」という苦言も呈された。つまり、疑義に対して、判定は間違っていない、という回答では意味がないということだ。この制度の中心メンバーである原田隆司氏(日本ラグビー公認A級レフリー)は、映像を検証し、レフリー委員会など関係各所と意見をすり合わせて回答を作成する重要な役目を担う。
「お互いにポジティブになるような回答をしていきたいです」。たとえば、ボール争奪戦の密集に入った選手が「オフサイド」と判定されたとする。その判定に納得できないコーチ側からは、「なぜ、オフサイドなのか。どうすれば反則にならないのか」という質問が出る。回答する側としては、反則になった理由を答えるのは当然ながら、根本的に修正したほうがいい反則なのか、微修正で済むものか、この角度からはレフリーにそう見えたので教え方を変える必要はないのではないか、といったアドバイスができる。コーチ側はレフリーの視点が明らかになり、コーチングに生かすことができるはずだ。
この制度の評価は実際に機能してからにすべきだが、ルールの適用について理解を深め合う機会として、大いに期待したい。