日本代表は、5月25日からパシフィックネーションズカップ(PNC)に臨む。初戦は、横浜の三ツ沢球技場でトンガ代表との対戦。続いて、フィジー、カナダ、アメリカ。フィジーとカナダとの間に、ウェールズ来日2試合が入る。この6連戦は、日本代表の現在地を知るうえで、平たく言えば「ちょうどいい」相手が並んでいる。
4月から5月にかけて行われたアジア五カ国対抗(A5N)では6連覇を成し遂げたが、実力的には日本が抜け出していて、常に主導権を握ることができた。しかし、これから対戦する相手はそうはいかない。FW戦では互角か劣勢になることが予想される。その圧力を受けながら、スピーディーにボールを動かすことができるのか。PNCに向けて、エディー・ジョーンズヘッドコーチは、4つのテーマを掲げた。
1=アタッキングプレーのテンポアップ
2=セットピース(スクラム、ラインアウト)の向上
3=スペースを埋めるディフェンス(相手を2次攻撃までに封じて、キックさせる)
4=自陣から、いかに脱出するか
これらが狙い通り遂行されれば好結果が出るし、できなければ強化の修正が必要になるということだ。練習の緊張感も高まっている。5月18日に日本代表の練習を取材したのだが、前日練習は、35分ほどで打ち切りになったという。ジョーンズHCが、「こんなのは、日本代表の練習じゃない」とやめさせた。A5N優勝のあと、選手の気持ちが切り替わっていなかったのだ。「私が関わって以降、日本代表でワーストの練習だった」とジョーンズHCは嘆いた。当然、選手達には緊張感が走った。「あれで気持ちのスイッチが入った」とベテランの大野均も語る。
ただし、ジョーンズHCは、帰りのバスの中で「練習に臨むための、いい準備がさせてあげられなかったのは私の責任」と選手に謝った。世界トップレベルのチームを渡り歩いてきたプロ・コーチの仕事だと感じた。選手のメンタル面も含めた体調管理はコーチの仕事だからだ。現在の日本代表は世界の列強に力負けしないために筋肉の量を上げるトレーニングを続けている。着実に肉体改造が進んでいるのは一目瞭然。ここでは、ストレングス&コンディショニングコーチのジョン・プライヤーの手腕が光る。各選手に合ったトレーニングを科学的に考え、怪我をしない程度の強度で追い込む。選手の感想を聞いていると、練習のマネージメントが絶妙のようだ。
これまで20年以上、代表の強化を見てきたが、これほど勤勉な日本代表は初めて見る。だが、どんなにいい強化をしても、それが結果につながるかどうかは未知数だ。現在の日本代表が目指す世界トップ10入りは同じように専門的な強化を図る国同士の戦いである。選手にもスタッフにもハードワークが求められる。トンガ戦から始まる6連戦で、日本代表は何を得て、どんな修正を施しながら進むのか。ジョーンズHCは、何を語るのか。期待外れに終われば責任を問われるのもプロだ。一試合一試合が注目に値するプロの仕事を、じっくり見させてもらいたい。