BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

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桜の季節もまもなく終わろうとしている。前回のコラム以降、日本選手権、東京セブンズと国内の大きなイベントがあり、北半球のシックスネーションズもウエールズの全勝優勝で幕を閉じた。 20 歳代前半の選手がずらりと並ぶウエールズは、2015年ワールドカップの優勝を狙える戦力と、2003年大会のイングランド以来の北半球勢の優勝に早くも期待が高まっている。今回はシックスネーションズのことを書こうと思っていたのだが、エディー・ジョーンズヘッドコーチ率いる日本代表のメンバーが発表になり、4月28日から始まるアジア五カ国対抗での指導も間近だ。ここは、日本代表について書きたい。

トップリーグ、日本選手権の二冠を獲得したサントリーサンゴリアスを率いたエディー・ジョーンズ氏が、いったいどんなメンバーを選出するのか興味津々だったのだが、おそらく、「エディーさんと私の好みは似ているなぁ」と感じた人が多かったはずだ。ここがポイント。
トップリーグでレギュラーとして活躍した選手を軸に、将来への期待も込めて、選出時は高校生だった藤田慶和(東福岡高校→早稲田大学)をメンバー入りさせるなど、多くの人が納得し、期待感を持つ人選だった。そして、キャプテンには人格者として定評のある廣瀬俊朗(東芝ブレイブルーパス)を据えた。
ジョーンズ HC は、メンバー選考にあたり、「キャラクターを重視した」という。これは単に性格が良い、という意味ではなく、組織を作る上でのバランスを重視したということのようだ。人格者のキャプテンがいて、練習では常に100%の力を出してチームメイトを鼓舞する佐々木隆道(サントリーサンゴリアス)がいて、CTBで選出された田村優(NEC グリーンロケッツ)のように、思いきりの良さが光るちょっとやんちゃなキャラクターもいる。廣瀬キャプテンは言っていた。「僕に求められているのは若い選手の中から、リーダーを育てることだと思います。もしそういう選手が出てくれば、 2015 年のワールドカップはその選手が率いればいい。僕は一選手として出場を目指します」。
この言葉に代表されるように、日本ラグビーの未来を考えながら発言できるベテラン勢が多いのも、今回の日本代表の特徴だろう。ファンの期待が高まるわけである。ジョーンズHCは、サントリーでは、プロ選手ではなく、社員選手の竹本隼太郎をキャプテンにした。社員の代表としてチームが求心力を持つためだ。今回の日本代表メンバーも、ラグビー界の求心力になるという意味では、心憎いほどの人選である。
ただし、いいチームだからと言って国際舞台で勝てるとは限らない。ここは厳しい目で見ていかなくてはいけないが、彼が作り上げたサントリーのラグビーから、その方向性を見ると期待感は高まる。もちろん、選手が違うので同じラグビーにはならないが、相手の先手をとって、攻撃を仕掛け続けて、走り勝つスタイルは似たものになるだろう。攻撃的なラグビーで昨季の大学選手権を席巻した天理大の小松節夫監督は、サントリーのラグビーを高く評価する。「日本選手権の決勝戦(対パナソニック戦)は僕が思う今季のベストゲーム。お互いに手の内を知った者同士の戦いで、最後に試合を決めるトライを獲りきる。試合開始からすべてのプレーが布石なんですよね」。SH デュプレアの防御背後へのキックも、ボールキャリアー以外の選手の動きも、すべて攻めるスペースを作るための布石なのだ。ディフェンダーの視線を外に向かせて内を突く、あるいはその逆と、さまざまにボールを動かしておいて、最後に仕留める。そのために、全選手が動き続ける。
緻密に準備されたプレーを、緻密で厳しい練習によって正確に運動量豊富にできるように仕上げていく。その手順は日本代表が世界で勝つ術として機能するはずだ。

図らずも、前回のコラムのタイトルは「工夫を凝らした闘いを」だったのだが、そういうラグビーを見せてくれさえすれば、ここ数年、日本代表戦から離れていたファンが客席に戻ってくるだろう。発表されている日本代表戦の日程は以下の通り。アジア五カ国対抗は優勝して当然の実力だが、パシフィックネーションズカップは、内容が問われる。前ヘッドコーチのジョン・カーワンは、がっぷり四つ相撲のラグビーだった。だからこそ、力負けしない外国人選手が多数必要になったし、格下には星を落とさない安定感があったのだが、新生日本代表は日本人選手が軸。パワー負けする可能性も高いし、トンガ、サモア、フィジーと戦うパシフィックネーションズカップでは相手のメンバー次第で全敗もあるだろう。だが、それが正しいプロセスの中での敗戦であればファンは受け入れてくれるはず。生まれ変わろうとするチームの胎動を多くのファンに感じさせてもらいたい。

◎日本代表 4月〜6月の日程

★アジア五カ国対抗

4 月 28 日 ( 土 ) 18:00 対カザフスタン代表(場所:カザフスタン)

5 月 5 日 ( 土 ) 18:00 対 UAE 代表(福岡・博多)

5 月 12 日 ( 土 ) 13:00 対韓国代表(韓国・城南)

5 月 19 日 ( 土 ) 14:00 対香港代表(東京・秩父宮)

★パシフィックネーションズカップ

6 月 5 日 ( 火 ) 19:00 対フィジー代表(愛知・瑞穂)

6 月 10 日 ( 日 ) 14:00 対トンガ代表(東京・秩父宮)

6 月 17 日 ( 日 ) 14:00 対サモア代表(東京・秩父宮)