BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

05th ジャーナリストの不運

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6月21日の月曜日、ラグビージャーナリストは天に見放された。その不運は、我が人生における指折りの出来事だった。
台風である。12時50分、東京駅から「のぞみ」に乗って新大阪に向かった。ジェイスポーツ「ラグビープラネット」という番組の公開収録出演のためだった。お客さんは200名ほどと予定されている。出演者は、私も含めた進行役3人とNECの箕内、向山2選手と、神戸製鋼の元木、大畑、松原の3選手だった。開始時刻は夕方6時30分である。午後3時くらいになれば台風も抜ける。余裕を持って列車を選んだつもりだった。ところがだ。台風は抜けたのに強風にあおられたマンションの屋根が線路をふさぎ、そのうえ架線を切るというとんでもない事態が発生した。各車両の文字ニュースには「巨大な飛来物の撤去に相当の時間がかか見込み」と流れる。巨大な飛来物っていったいなんだ?
向山選手は品川で帰った。MCの矢野さんは新横浜で断念した。箕内選手は私と同じく12時50分発の電車だった。熱海で4時間ほど止まったあとじわり動き始めので、2人で相談してとりあえず進んだが、7時間かけて名古屋。すでに時刻は8時だった。収録、終了。残念っ!
代役のアナウンサーの大前さんと柿内さん、そして神戸製鋼の3選手ががんばってくれた。ありがとう。そして台風のなか駆けつけてくださったラグビーファンのみなさん、ごめんなさい。箕内選手は最悪の状況のなか、いつでも東京に引き返せたのに(名古屋からの上りは動いていた)、ほんの少しでもファンのみなさんに会えたらと粘り強く大阪行きを画策していた。いいヤツであることを報告しておきたい。ちなみに車内では善後策の電話連絡に忙殺され、すべてが終わったところで携帯電話の電源が底をついた。ぎりぎりセーフ。

実は、前日夜にニュージーランド(NZ)から帰ったばかりだった。6月19日、世界王者イングランド代表がNZ代表と対戦したテストマッチを実況・解説したのだ。結果はNZの快勝。今季より就任したグレアム・ヘンリー監督はNZきっての知将である。スクラム、ラインアウトも安定し、グラウンドを大きく使ってボールを動かすワイド展開も選手の意志が明確に統一されていた。

選手選考も気が利いている。前主将のフランカー、ルーベン・ソーンをあっさり外し、6年ぶりの代表キャップ獲得となったNO8ラッシュや、ワイカト・チーフスの闘将ジョノ・ギッベスをフランカーで先発させる。もともとボール争奪戦に身体を張る両選手はイングランドの強力FWと堂々格闘しボールを獲得し続けた。献身的に働く選手とSOカーロス・スペンサー、俊足WTBジョー・ロコゾコという天才の融合。NZは当分強い。スター選手を集めても勝てはしない。チームスポーツはバランスが大切だと再認識させられる試合だった。ただし、2007年のW杯まで好調が続くとは限らない。ここが世界一決定戦が4年に一度しかない面白さである。

NZでリコーの田沼選手に会った。現在、リコーを休職し、オークランドのグラマーカールトン・クラブでプレーしている。このクラブには、元トヨタ自動車の勝野選手も含み4名の日本人選手がプレーしていた。ほかにも、元ヤマハの四宮洋平、元サントリーの大久保直弥、ヤマハの木曽一ら多くの日本人選手がNZでプレーしている。彼らが挑戦しているのはNZ州代表選手権「NPC」1部リーグへの出場だ。過去、NZの州代表でプレーした日本人は1969年カンタベリーでプレーした坂田好弘氏のみである。クラブでのプレーを認められ、基本的にトライアルを受けなければ州代表に選ばれることはない。そんななか大久保選手がNZ最南端サウスランドのトライアルを受け、26名のスコッドに残ったという一報が届いた。試合に出場すればNPC1部では35年ぶりの快挙となる。一世一代の挑戦をしている時に日本代表のイタリア戦に帰ることができなかったのは理解できる。 日本代表は厳しい練習を続けている。頑張ってくれるだろう。大久保選手ほかNZでチャレンジを続ける日本人選手の活躍を祈りたい。