ワールドカップ日本開催、男女7人制ラグビーのオリンピック種目採用、そしてニュージーランドとオーストラリアの代表同士によるブレディスローカップの東京開催と、活気づくラグビー界だが、そのすべてに共通しているキーワードが「グローバライゼイション」(国際化)である。これまで伝統国間の中だけで楽しまれてきたラグビーが広く世界にその魅力を発信しようとしているのだ。
ラグビーは1995年に競技規則からアマチュア規定を撤廃しプレーに対する報酬を認めるようになった。他のメジャースポーツに比べるとプロ化が遅かったこともあって、世界普及も立ち遅れていた。お馴染みの国ばかりが対戦し、世界の大半の地域ではラグビーの認知度は低かったのである。閉塞感からの脱却、魅力あるこのスポーツを世界に発信したいというラグビー人の願い、加えてプロ化を促進するためのマーケットの拡大、さまざまな要素が絡み合って、アジアで初のワールドカップ開催、ラグビーのオリンピック復帰(15人制は過去4大会で採用されている)という流れが出来上がった。
特に大きいのは男女7人制ラグビーの2016年、2020年オリンピック種目採用である。世界中で楕円球を手にする人口が飛躍的に増えるのは容易に想像できる。2019年ワールドカップ日本開催が実現した背景には、IOC(国際オリンピック委員会)にラグビー界が本気で世界普及を推し進める姿勢を示す狙いもあったはずだ。
ここでぜひとも目を向けてもらいたいのは女子ラグビーである。日本の女子ラグビーは、1988年に日本女子ラグビー連盟が設立されたときから本格的に始まった。しかし、競技人口は伸びず現在の登録選手は450名程度。代表チームが国際大会に参加するなど着実に成果をあげているが選手層は薄い。中学や高校に女子ラグビー部もない。逆に言えば、今から女子ラグビーを始めても2016年のオリンピック出場がかなうかもしれないというオリンピック競技では数少ないスポーツなのだ。今後は他競技からのタレント発掘のアイディアもあり、ぜひとも多くのアスリートに参加してほしい。
女子日本代表は、11月初旬に行われる2010年女子ワールドカップのアジア予選に参加。12月上旬には、男女の7人制代表が東アジア大会に出場する。7人制ラグビー、そして女子ラグビーにご注目を。IRBのオリンピック復帰キャンペーンで制作されたPR映像に流れたメッセージを一部分紹介したい。
《ラグビーは世界に喜びと感動を与えます。勇気を与えます。あなたも参加してください。プライドをかけた戦い。チームワークの結晶。努力の結晶。パワーとスピード。仲間との絆。フェアプレー。相手への尊敬。ラグビーはみんなを一つにしてくれます。過去の経験を生かし、未来を切り開きます》
ジャパンラグビートップリーグ2009-2010は、10月25日で第7節までを終了。日本代表活動期間による約1か月の休止期間を経て、11月28日より再開される。唯一の全勝は三洋電機ワイルドナイツ、これをサントリーサンゴリアス、東芝ブレイブルーパスが追っている。4位以下は大混戦で、プレーオフ進出枠を巡る争いは熾烈だ。
なかでも注目はクボタスピアーズ。NEC、ヤマハ発動機、神戸製鋼を下し、第7節でサントリーを苦しめぬいた。PR端本、FL今野、NO8ブロードハースト、SH李など新戦力が運動量豊富に走り回り、攻撃の幅を広げている。「自分たちのラグビーができている、できていないの理解力が進んだと思う」と山神監督。プレシーズンの試合で三洋電機に勝ち、トヨタ、リコーに敗れるという浮き沈みの激しい戦いした中で選手たちが何かをつかんだという。無用な反則も減り、フェアープレーランキングでも7節を終えて4位につけている。後半戦は、8節トヨタ自動車、9節三洋電機、10節東芝という強豪との三連戦が待ち受ける。大黒柱のトウタイ・ケフも復帰。クボタの動向から目が離せない。
最後になってしまったが、11月は日本代表がカナダ代表を迎え撃つ。世界ランキングは日本の14位に対してカナダが13位。実力伯仲の好ゲームが期待されている。すでに44名のスコッドが発表されており、11月7日にセレクションマッチを行い26名に絞り込む。FWの軸であるルーク・トンプソン(近鉄ライナーズ)が足首の骨折で欠場が決まっているほか、キャプテンの菊谷崇(トヨタ自動車ベルブリッツ)もトップリーグの試合で肘を脱臼するなど、主力の怪我が気になるところだが、サントリーのLO眞壁、FB有賀ら現在調子のいい選手が選ばれているのは頼もしい。ジョン・カーワンヘッドコーチのセレクションポリシー「何かスペシャルなものを持っている選手を選び伸ばしたい」も変わっていない。東海大のHO木津、早大のSO山中らの学生に期待するのもそこだ。
「日本人にあった日本のラグビーをすれば、ファンのみなさんも一体になってくれると思います」とカーワンヘッドコーチ。その言葉を裏付けるような内容のいい勝ち方を期待しよう。日本代表がその存在感を国内外にアピールする。それこそが、ラグビー普及の一番の近道なのだから。