BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

45th 強いチームは特徴がある

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2008年度のラグビーシーズンも、残るはマイクロソフトカップ(MS杯)と日本選手権を残すのみとなった。全回のコラムでも触れた全国高校大会は大方の予想通り、大阪の常翔啓光学園と奈良の御所実業・工業の決勝戦となり、常翔啓光学園が立ち上がりから思い切って攻め、4年ぶり7回目の優勝を成し遂げた。ともに体格は小さいのだが、短いパスをたくさんつなぐプレースタイルで、間隔の広い攻撃ラインで飛ばしパス全盛の大学、トップリーグとは一線を画していた。それは、非力なチームが勝つ術を示しており、日本代表が世界と戦うことを考える上でも参考になる戦いぶりだった気がする。

2月1日からは、トップリーグ上位4チームによるプレーオフ・MS杯が開幕するが、その4チームの監督を集めてのトークイベントで司会をする機会があった。参加したのは、東芝ブレイブルーパス和田賢一監督代行、三洋電機ワイルドナイツ飯島均監督、サントリーサンゴリアス清宮克幸監督、神戸製鋼コベルコスティーラーズ平尾誠二GM兼総監督。平尾氏が日本代表監督だった時代に和田氏を選手として選んでいたり、飯島氏と清宮氏は、世代が近く、頻繁に試合をしていたこともあって終始和やかなトークだった。その中で、「今季のトップリーグで予想以上に強かったチームがあるか?」という共通の質問があったのだが、各監督が絶賛したのが福岡サニックスブルースだった。
「対戦した13チームでひとつだけ違うラグビーをするチームがあるんです。サニックスでした。自分たちはこれで勝つんだという信念の下、粘り強いし、工夫もある」と清宮監督が絶賛すれば、飯島監督も「ここで言うのはみなさんに失礼かもしれないですけど、トップリーグの中で藤井監督は一番手腕があるんじゃないですか」と語った。
サニックスのコンセプトは「走り勝つ」ことである。グラウンドのどこからでも攻撃を仕掛け、相手が疲れ始めた終盤の怒濤の攻撃は圧巻だ。走り勝つことに全選手が迷いなく取り組むからこそ、サニックスのプレースタイルは見る者の記憶に残るのである。惜敗が多く、最終的に11位になってしまったが、限られた戦力での健闘が光った。

ずいぶん前の話だが、1999年のワールドカップ前にオーストラリアに取材に行き、当時のオーストラリア代表監督ロッド・マックイーン氏に、「世界のトップ5の国を一言で表現してください」と質問したことがある。彼はこう答えたと記憶している。
「ニュージーランド=スピード、南アフリカ=パワー、オーストラリア=組織、フランス=ひらめき、イングランド=情熱」その頃から強いチームは一言で言い表せるという確信があっての質問だった。見事にシンプルな答えが返ってきて嬉しかった。もちろん、どのチームもバランスのいいラグビーをしているが、特徴は確かにある。
この観点で、MS杯出場の4チームを見ると言葉を当てはめるのがなかなか難しい。東芝=パワー、三洋電機=スピード、サントリー=組織、神戸製鋼=巧み、といったところか。「走り勝つ」のような言葉だと、東芝に「当たり勝つ」が浮かぶ。そう考えると、もっともシンプルに特徴を出して戦っているのは東芝ということなのだろう。
「特徴を出すこと=優勝」ではないが、MS杯、日本選手権ともに東芝を軸に優勝争いを見ていくと分かりやすい。東芝は、個々の選手が一対一で当たり負けずに前に出て行くシンプルなスタイルだ。当たりの強い東芝に対して、どんな工夫で各チームが挑むのか。スピードランナー揃いの三洋は、キックも交えて縦横にボールを動かして防御を崩しにかかるだろう。サントリーは、得意のスクラムで圧力をかけ、そこから有効な攻撃を仕掛けたい。神戸製鋼は、粘りの防御で耐え、細かくボールをつなぐ。ここからは、負ければ終わりの勝ち抜き戦。勝つための周到な準備が勝敗を分ける。