前回のコラム以降、トップリーグは3節を消化し、東芝ブレイブルーパスが首位を走っている。王者サントリーサンゴリアスは、開幕戦で三洋電機ワイルドナイツに敗れたこともあって、3節を終えた時点では5位と出遅れた。ただし、今後順位を上げる可能性は高く、この3強にどこがついていけるかが今後の焦点になる。
3節以降、7人制ワールドカップ・アジア予選のため、約3週間の休止期間があった。この間に、7人制日本代表は、男女ともに予選で優勝。来年3月にドバイで行われるワールドカップ本大会への出場権を獲得している。男子は5大会連続の出場、女子は初のワールドカップ開催で初出場となった。
もう一つ、15人制のワールドカップの話題では、9月30日、日本ラグビー協会が、2015年、2019年のワールドカップ日本開催への正式入札をIRB(国際ラグビーボード)を表明したことを発表した。2011年大会の招致活動では、ニュージーランド、南アフリカ、日本がこの一大会の開催を巡って争ったのだが、2015年、19年の開催地は同時に決定されることが決まった。
理由はさまざま語られているが、2011年のニュージーランド大会で大幅な減収が見込まれるため、2015年は収益の見込める国で開催しなければならない事情がある。そうなると、開催地はイングランドが有力なのだが、イングランドに決めてしまうと、また伝統国で開催地を回しているだけで、IRBはラグビーのグローバルな発展を考えていないという批判が出る。そのために、2015年はイングランド、19年は日本など初開催の国で、という考え方のようなのだ。
ということで、2019年の日本開催が現実的なものになるかと思われたのだが、正式入札を表明した国が多かったことで、これも確実なものではなくなっている。今回、2大会ともに招致を表明したのは日本、豪州、アイルランド、イタリア、スコットランド、南アフリカ、ウエールズ。イングランドは15年大会のみ、ロシアが19年大会に限って招致に手を挙げている。どこも日本にとっては強敵だ。国代表チームの実力も、観客動員力(国内のラグビー人気)も日本より上の国ばかりである。日本協会関係者によれば、ここまで多数の協会が手を挙げるとは想定外だったようだ。
ちなみに、2010年の「女子ワールドカップ」の開催国はイングランドに決定している。そして、もうひとつ開催地が決まったのが、「ジュニア・ワールド・トロフィー」。今年はチリで開催されたが、来年4月にケニアで開催される。これは、来年、日本で開催されることになった20歳以下の世界大会「ジュニアワールドチャンピオンシップ」の下部大会である。したがって、日本は出場しないのだが、こうした各世界大会は、4年に一度のワールドカップの収益で運営されている。ラグビーの世界普及のためには、お金がいる。収益重視も致し方なしというところなのだ。
説明が長くなってしまったが、僕は2015年大会実現のためにベストを尽くすべきだと考える。1980年代から90年にかけて、国内ラグビーは空前の人気を博していた。サッカーのJリーグが始まる直前までのことだ。このときにラグビーを見て過ごした人たちは、今、30歳代後半から上世代で社会の中枢にあり、子供達の親としてもラグビー人気復活のキーになる人たちだ。国内ラグビーの普及活動は悠長に構えている暇はないのである。もちろん、2019年でも開催できるなら、それに越したことはないのだが、ラグビーに関心のある世代が若いうちに質の高いラグビーを間近に見てもらいたいのだ。いずれにしても、来年7月28日、2015年、19年の開催国が決定する。
11月は、アメリカ代表が来日して日本代表と2試合を行う。例年、6月、11月は南北半球が交流月になっているのだが、この秋は世界ランク・トップ3、NZ、南ア、豪州が欧州遠征。楽しみな試合が多いのだが、このことは次回のコラムで触れたいと思う。