BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

42th 知っておきたい言葉

backBtn

連日の局地的大雨とカミナリに戦々恐々としているうちに9月に入った。そして、9月5日からは、6年目を迎えたトップリーグが開幕し、国内シーズンが本格的に幕を開ける。トップリーグは、前年度王者サントリーサンゴリアス、準優勝の三洋電機ワイルドナイツを軸に、優勝争いが展開されそうだ。
これに加えて、トップリーグで2006年度まで3連覇を成し遂げた東芝ブレイブルーパスがシーズンを直前に調子を上げてきた。8月22日に、東芝府中事業場内のグラウンドで行われた神戸製鋼コベルコスティーラーズとのプレシーズンマッチでは、50−0という大勝。
東芝伝統のコンタクトプレーの強さと、シンプルに前へ出る攻撃がかみあって、かつての力強さが戻ってきた感じだ。SOかインサイドCTB、あるいはWTBに入りそうな新外国人選手、デイヴィッド・ヒル、注目である。開幕節では、同じくパワフルなコンタクトプレーには定評のあるトヨタ自動車ヴェルブリッツと戦う(9月6日 瑞穂ラグビー場)。このガチンコ対決は壮絶な試合になりそうだし、その後のシーズンを占うことになるだろう。

前々回のコラムでは新ルールのこと、前回のコラムでは新外国人選手のことを書いた。今回は、新シーズンで頻繁に使われそうな言葉を説明しておきたい。「ELV(イーエルヴイ)」、「シーリングオフ」、「クイックスロー」である。
「ELV」は、今季から導入される試験的実施ルールの略称である。正確には、Experimental Law Variations 世界では、ELVsと略されているのだが、日本ではさらに簡略化してELVとしている。2008年8月1日から国際的にすべてのレベルの試合で試験的に実施されるもので、1年間試用後、IRB理事会で再検討し、2009年秋に正式決定されるのだが、ルールに関する説明のときに、よく出てくるので覚えておきたい。

「シーリングオフ」は、聞き慣れない人も多いと思う。8月上旬、国際ラグビーボード(IRB)から、レフリングにおける競技規則の適用について通達があった。その中で、タックルについての部分にこの言葉が出てくる。
《プレーヤーが、ボールキャリアの上、または、ボールキャリアを越えて地面に倒れることは、いわゆる「シーリングオフ」 (ボールにかぶさることにより、相手チームプレーヤーがボールにプレーすることを妨げる行為) であり、競技規則に違反するプレーである。レフリーはこの点につき、厳しく取り締まるべきである》
ラグビーは、倒れた選手はプレーできないことになっている。タックル後のボール争奪も、両足でしっかり立った選手同士で行われなければいけない。ところが、最近のラグビーでは、タックルされたボール保持者をサポートしてそのまま一緒に倒れたり、おおいかぶさるようにして相手からボールをプロテクトするプレーが反則にならない場合が多い。攻撃の継続性を重視するレフリングがそうするのだが、これを競技規則通りにしていこうという通達なのだ。今季は、「シーリングオフ」という言葉がコーチからも選手からも頻繁に聞こえるはずである。
最後に「クイックスロー」。タッチラインの外に相手が蹴り出したボールをキャッチした選手が、ラインアウトに両チームが並ぶ前に投げ入れる動きのことだが、これまでは、タッチラインから5m以上、ゴールラインに平行に投げ入れる必要があった。これが、ゴールラインに平行、つまりまっすぐではなくても、後ろ側なら斜めに入れてもよくなった。これによって、クイックスローがやりやすくなり、タッチに出たボールを素速く投げ入れてカウンターアタックを仕掛けたり、蹴り返す動きが多くなる。したがって、テレビの実況中継などでも、「クイックスロー」という言葉が連呼されるはずである。ただし、このクイックスロー。タッチに出たボールを使う必要があり、しかも他の選手が触れていないボールで、すみやかに行われなくてはいけない。ボールをキャッチした選手が投げ入れるのが原則なのでお忘れなく。

他にも大切なことはたくさんあるのだが、すべてを一度に覚えるのも理解するのも難しいはず。この3つの言葉を理解していれば、あなたはすでに相当なラグビー通である。