BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

37th 2008年始動

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秋にフランスで開催されたワールドカップ(W杯)が遠い過去のように思える。年が明け、2008年が始まっている。さすがにフランスから帰国後の時差ボケは解消され、京都の実家で白味噌のお雑煮を食し、焼酎に焼き魚で、どっぷり日本の食生活に戻っている。
大学選手権のベスト4は、1974年度大会以来、関東大学対抗戦の4校(早大、明大、慶大、帝京大)が勝ち残り、決勝は39年ぶりの早慶対決。関東学大の不祥事による公式戦辞退の影響は大きいが、早大に続いて、明大、慶大という伝統校も強化に本腰を入れており、今後もこの3校は優勝争いに絡んでくることになりそうだ。
関西勢はベスト4にひとつも残れなかった。もちろん、これは勝ち残った各大学の努力の成果だし、同じ所属リーグのチームが勝ち残るのは悪いことではない。東高西低も今に始まったことではないし、大阪、京都の高校の有力選手が東に流れるのも昔からだ。変わったのは関西に残った選手層の薄さである。かつては、「ヘラクレス軍団」と称された大体大も小柄な選手が多くなった。高校ラグビー自体の競技人口減少もあるが、サッカー、野球など他競技の人材確保の充実に対して、ラグビー界が立ち遅れている面も否定できない。
もうひとつ、ルールの影響を懸念する声もある。中学、高校では、安全面に配慮して、スクラムで強力に押し合わないルールが採用されている。中学ではほとんど形だけのスクラムだし、高校では1.5m以上は押せないことになっている。つまり、ジュニア層ではパワフルな選手より、運動能力の高い走り回れる選手がレギュラーポジションを獲得することが多くなる。自然とバランスのとれた体型の選手が多くなり、大相撲の力士のような体型の選手は控えに甘んじることに。結果として大学では経験ある大型選手が不足することになっている。今もトップレベルの選手の中には大型選手もいるし、技術レベルも高まってはいるのだが、そうした選手が有力大学に集中することで大学の格差が広がっている気がしてならない。
関西勢の奮起に期待はしたいが、東高西低は高校ラグビー全体の地盤沈下にも大きな要因がある。ラグビー界全体の問題として考え、中学、高校年代の人材発掘と育成を考えていかなければならないだろう。

海外ラグビーは、現在、イングランド、フランスなど北半球の各国でクラブのリーグ戦が繰り広げられている。僕が解説で携わるJSPORTSでは、今季からハイネケンカップ(ヨーロピアン・カップ)の放送を始めた。フランス、イングランド、スコットランド、アイルランド、ウエールズ、イタリアの上位クラブ14チームが、4チームずつ6組に分かれてホーム&アウェインで対戦し、最終的にトップ8でノックアウト方式のトーナメントにより、ヨーロッパNO1を決める大会だ。サッカーのチャンピオンズリーグに相当する。W杯で活躍した代表選手の多くが各クラブに散らばっているので、それだけでも華やかで楽しいのだが、各国のラグビー文化も感じられて興味深い。
すべてが放送されるわけではないが、フランスの人気クラブ、スタッド・フランセ、トゥールーズや、イングランドのレスタータイガースなどを見ることができる。僕が解説した中では、レスタータイガースのホームゲームの雰囲気が素晴らしかった。12月8日に、レスターのウェルフォードロードで行われたものだが、優勝候補の一角トゥールーズを迎えるとあって、このスタジアムの記録となる17,498人の観衆が詰めかけた。
ちなみに、レスターの人口は約28万人、スタジアムはタイガースのホームグラウンドである。そして、タイガースのホームゲームは常に16,000人以上の観客が詰めかける。観客席は立錐の余地なし。トライ後のゴールキックや、ペナルティゴールを狙う緊張の場面では、敵味方関係なく静まりかえるマナーもしっかりしている。タイガースは多くの選手がこのクラブで育っている。だからこそ応援も熱い。今季からは、元オールブラックスのCTBアーロン・メイジャーも加入した。本場のラグビー文化を味わえるハイネケンカップは5月まで続く。視聴可能の方は、一度ぜひ。