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About Koichi Murakami

21th 関西大学Aリーグ開幕

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9月25日、関西大学Aリーグの開幕戦を見に行った。東大阪市の近鉄花園ラグビー場には、全8大学が揃い、2つのグラウンドを使って2試合ずつが同時進行された。昨季の4強対決では、同志社大が立命大を36−26で、京産大が大体大を29−19とそれぞれ僅差で下した。実力の接近した好ゲームだったのだが、対関東勢を考えると、関西勢の戦いぶりはやや非力に感じた。その場にいた関係者の多くからも同じような感想がもれた。FWで相手を崩すような力強い動きがなく、ミスや反則も多いのである。
80年代〜90年代は関西学生ラグビーの隆盛期であった。82年度から同志社大学が3連覇したのをはじめ、京産大が6度、大体大が2度、ベスト4に進出している。同志社を目標にすれば、イコール全国につながった時代だった。90年代後半から、関西勢の低迷は続いている。

関西出身の高校生の多くが、華やかな関東の大学を目指すというのは以前からあったことだ。それでも、残った人材をやりくりして各チームは独自の強化を図ってきた。強力FWで一時代を築いた大体大の坂田好弘監督は、大阪の全国大会予選のプログラムを眺め、体格のいい選手に声をかけては一流選手に育てあげた。京産大の大西健監督は、1973年の監督就任以降、早朝練習を続け、不断の努力でチームに自信を植え付けた。今の時代と何が違うのだろう。
「掘り出し物がいなくなった」。坂田監督の言葉は、日本ラグビーの現状を端的に表している。競技人口の減少で高校ラグビーの選手層は年々薄くなっているからだ。平成16年度の日本協会競技者登録数は高校で34,720人。優秀な人材は多いのだが、そういった選手は中学で発掘されて強豪高校に入学し、さらに高校で名をはせた選手は関東の大学へ進学を希望する。加えて、少子化対策もあって関西であれば、立命館、関西学院などの伝統校も推薦制度を充実させて運動部の強化にあたっており、見逃されている選手は少ない。かつて無名選手を育て上げて強化を図った大体大、京産大には逆風というわけだ。

しかし、大西監督は少し違う角度から現状を分析する。「現代ラグビーは、総合力が求められている。偏ったチーム作りで勝つのが難しい」。海外のコーチ導入など、各大学のコーチングが発達した結果、組織的な戦略が浸透し、スクラム、モールで相手を押さえ込むような武骨なラグビーは通用しなくなっている。緻密なコーチングと、ゲームを操ることのできる戦術眼を持った人材の確保が必要ということだろう。
スクラムとモールに傾注して強化を図ってきた大西監督は、今季、豊田自動織機を強豪チームに仕立て上げたクリス・ミルステッド氏をコーチに招き、新たな道を歩み始めた。人材確保には限界があるとして、監督就任32年目にして改革を始めた大西監督は立派である。組織的な攻防を鍛え上げれば関東勢に対抗しうる人材が得られた時にチーム力は格段に上がるはずだ。大体大戦では倒された選手に素早くサポートして攻撃を継続していく意識の徹底が勝利を呼び込んでいた。すでにミルステッド・コーチの手腕は効果を表しており、指導方法でチームは変わることを証明した試合だった。サイズの小さな京産大が、緻密なコーチングでどこまで行けるかは興味深い。

関西大学勢復活の鍵は、コーチングの見直しである気がしてならない。