BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

20th いよいよラグビー シーズンイン

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日本ラグビーにとって9月は始まりの季節だ。社会人、大学の各リーグがスタートする。なかでも9月17日開幕のトップリーグは大混戦が予想される。連覇を狙う東芝府中ブレイブルーパス優勝争いの軸なのは間違いないが、これを追うチームの実力が拮抗していて目が離せない。NZ、南アなど世界各国から新しい戦力が来日しているのも楽しみのひとつ。リコーブラックラムズには元NZ代表ロックのノーム・マックスウェルが、サニックスブルースにはチェコ代表スタンドオフのマルティン・カフカという変わり種も。しかもこのカフカ選手、あの文豪フランツ・カフカの血を引き、フランスのクラブなどでもプレーしていた実力派選手。果たしてそのプレーは、知的なのか野性的なのか。

日本だけではなく、海外でも注目のリーグが開幕している。ニュージーランドの州代表選手権NPCは、すでに8月12日から開幕、ディビジョン1は10チームが戦い、10月22日が決勝戦。カンタベリーが連覇を目指す。イングランドのプレミアシップは9月2日に開幕。帰国したばかりのニューカッスル・ファルコンズは、セール・シャークスと対戦する。元NZ代表のカーロス・スペンサーが加入したノーサンプトン・セインツは、強豪レスター・タイガースとぶつかる。

ラグビーファンにとっては心浮き立つ時期だが、8月30日には、日本ラグビー協会で「日本代表チーム事業部の活動に関する」記者会見が開かれた。 前号のコラムでは、日本代表がよくプロフェッショナルに強化を進めることになったと説明した。
すでにヘッドコーチのジャンピエール・エリサルド氏は発表になっていたが、同会見で日本代表チーム事業部のジェネラルマネージャー(GM)として、元NECグリーンロケッツ監督太田治氏の就任が発表された。 今後は、太田氏がマネージメントを担当し、エリサルド氏がグラウンドでのチーム強化に当たるわけだが、実際にはフランス人のエリサルド氏は日本代表活動期間に来日することになっており、全体の運営の比重は太田氏にかかる部分が多くなる。選手との契約の見直し、国内各チームとの連携、春に相次いだ不祥事を二度と起こさないための規律の徹底などの他に、エリサルド氏と共同で選手選考にも当たることになり、仕事は山積している。当然、NECの仕事との兼業は不可能であり、来年の1月からは、NECから出向という形で専任のGMとなる。

記者会見では「ターゲット2007」と題して、2007年W杯予選プールで2勝、世界ランキング10位を目指す、JAPANサポーターを10万人に。などの目標を掲げ、2011年のW杯にはベスト8入りを目指すと明言した。具体策はまだ明確ではなく、エリサルド氏も不在。「そんなことで強くできるのか」という主旨の厳しい質問も飛んだが、太田氏の就任に対しては概ね好意的に受け取られたように感じた。それは彼がずっとトップレベルの現場に居続けたからだろう。秋田工業から明治大学に進み、大学4年時(86年)には、スクラム最前線のプロップとして日本代表に選出された、いわばラグビーエリート。卒業後は、日本電気に入社して、89年は宿沢監督のもと、スコットランド代表を破る歴史的勝利、91年のW杯ではスコットランド、アイルランドに肉迫し、ジンバブエに勝利。近年では最も強かったジャパンの屋台骨を支えた。ところが、95年W杯は一転してNZに145点を奪われる屈辱にまみれる。それだけではなく、2002年にはNECグリーンロケッツの監督として日本選手権を制覇し、強豪チームの礎を築くなど現場に居続けた。
日本代表がいかにすれば世界に勝ち、何を怠れば負けるのかを肌で感じ、急速に進化する現代ラグビーも知っている。このタイプは過去の強化委員長にはいなかった。長らくラグビーを取材し続けた記者が期待感を抱くわけである。日本代表が強くなれば、サポーターの数も含めて、日本ラグビーのすべての流れが好転するのは自明の理だが、2007年W杯の予選プール2勝というのは意外に難しい。すでに2007年フランスW杯の組み分け、スケジュールは発表されており、アジア地区1位通過が濃厚な日本は、オーストラリア、ウエールズ、フィジー、アメリカ地区2位と同じ組になる。おそらく、アメリカ、カナダあたりが相手だ。これらの国から2勝をあげるとなると、現状より1ランク上の実力をつけなければならない。それを2007年9月のW杯開催までに果たさなくたはならないのだ。太田、エリサルド体制の2006年がいかに大切かということだ。
専任スタッフでプロ集団としてやっていく以上、甘えは許されず、結果にともなって厳しい評価がくだされる。まずは今秋11月5日にスペイン代表とのテストマッチが行われるが、W杯2勝への期待感膨らむ試合にしてもらいたい。春の日本代表選手、そして日本代表を目指す選手達が、9月、10月の各リーグ戦で質の高いパフォーマンスを見せ、日本代表への期待感を煽ってもらいたいとう。