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About Koichi Murakami

15th シックスネーションズとイングランドプレミアリーグ

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2005年のシックスネイションズ(北半球6か国対抗)は、ウエールズが27年ぶりのグランドスラムで11年ぶり23度目の優勝を果たした。今季の同大会最優秀選手には、ウエールズFLマーティン・ウィリアムズが選出された。イングランド、フランス、アイルランドの3強を、素速くボールを動かし続けるアタックと粘り強いディフェンスで破った見事な優勝だった。

シックスネイションズとは、イングランド、スコットランド、ウエールズ、アイルランドの英&アイルランド4協会と、フランス、イタリアが参加して行われている。全勝優勝のことを「グランドスラム」と呼び、英・アイルランド4協会に限った言い方で、他の3協会に全勝することを「トリプルクラウン」と言う。つまり、ウエールズは、両方を同時に達成したことになる。ウエールズが前回グランドスラムを達成したのは、黄金時代の1978年。天才SOフィル・ベネット、伝説のWTBジェラルド・デイヴィス、JJ・ウィリアムズらがいた頃である。カーディフのミレニアム・スタジアムの大合唱と熱狂は必然だった。
ウエールズは、他国に比して才能豊かな選手が揃っているとは言えない。それでも、ボールの動かし方の気が利いている。相手のミスや、タックルからターンオーバーしたボールは確実に速攻を仕掛けるし、ディフェンスの人数が揃っていても、パスのタイミングと走り込んでくる選手の加速の良さで抜いていく。運動量は無尽蔵でクリエイティブだ。ディフェンス面でも、全員が骨惜しみすることなく相手にプレッシャーをかけていく。3月19日の最終節でも、アイルランドSOオガーラのキックを猛然とチャージし、そのまま足でひっかけてトライしたのは、スクラム最前列のPRジェンキンズだった。すべての選手が力を出し切っている。この結束力。マイク・ラダック監督はただ者ではない。

JSPORTSの解説者の林雅人さんも言っていたが、今や、南半球最高のエンターテインメント・ラグビーと呼ばれるスーパー12よりも、シックスネイションズのほうがボールの動きが素速くて、見ていて面白い。同感である。北半球ラグビーの進化は凄まじい勢いだ。北半球3強にウエールズを加えた「4強」は、南半球3強(ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ)に匹敵する実力を、すでに有している。

シックスネイションズは最終的に4位に終わったが、2003年W杯王者イングランドの実力が落ちているわけではない。正確無比なプレースキッカー、ジョニー・ウィルキンソンの負傷欠場がなかったら、あと2勝はできていただろう。シックスネイションズが終了すると、北半球はヨーロピアンカップ、プレミアシップなどのクラブ・リーグがクライマックスに入る。一番人気のイングランド・プレミアシップは、12チームがホーム&アウェイの総当たりで戦ってきたが、3月第2週目に18節を終了。4節を残すのみとなった。首位を走るのは、イングランド代表NO8コリー、FLムーディーなどを擁するレスター・タイガース、2位はロンドン・ワスプス、そして3位に、イングランド代表FBジェイソン・ロビンソンが引っ張るセール・シャークスがつけている。
プレミアシップは、上位3位までがプレイオフに進み、2位と3位が準決勝を行い、勝者が1位チームと決勝戦を行う方式をとる。
決勝は5月14日、イングランド・ラグビーの聖地トゥイッケナムで開催される。レスターの1位通過は動きそうもないが、4位バース、5位サラセンズ、6位グロスター、7位ニューカッスルにも3位に滑り込む可能性はあり、大混戦になっている。北半球ラグビーの進化からも目が離せなくなってきた。