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About Koichi Murakami

14th 2011年 ラグビーワールドカップ招致

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2月20日、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)に白髪の元アイルランド代表プロップがやってきた。IRB(国際ラグビーボード)のシド・ミラー会長である。3月18日から香港で開催される7人制ワールドカップの抽選会で香港来訪の際に、2011年ラグビーワールドカップ(W杯)招致に名乗りを上げた日本に立ち寄ったのだ。つまり正式な視察ではない。そんな前置きのあと、競技場会議室で記者会見が行われた。
「今、ダブリンに新しいスタジアムを作っているのですが、このまま持っていければと思うような素晴らしいスタジアムですね。
W杯決勝を戦うのに相応しい舞台です。2003年、オーストラリアで開催されたW杯は大成功を収めました。約190万人の観客を集め、海外からは9万人の観光客がやってきました。開催するには、ホテル、スタジアムも含め、観客が楽しむためのシステムを構築することが大事です」
現在、2011年W杯招致には、日本のほか南アフリカ共和国、ニュージーランド(NZ)が立候補を表明している。ミラー会長は日本の印象について聞かれると、こう答えた。
「日本は組織化された規律の守れる国です。W杯を開催した場合、オーストラリアより観光客も多く集まるのではないでしょうか。ただし、W杯がIRBにとって唯一の収入源であることも確かです。世界にラグビーを普及させていくための4年間分の資金を稼ぎ出す使命があるのです」
気になったのはここだ。IRBはラグビーを世界的に広く普及させるために、7人制ラグビーをオリンピックの種目に加える働きかけや、ラグビーが普及していない国への資金援助など積極的に活動している。アジア進出はマーケットを広げる意味でも大きな魅力である。ただし、各国協会への資金援助の資源はW杯で稼ぐしかないのが現状。アジアだからという理由だけでは日本開催にはならないということだ。スタジアムなどインフラの整備の他に、日本でやるとIRBが潤うというプランを示していかなければ、日本にW杯はやってこない。開催国決定はシビアに行われるわけだ。

5月に、立候補各国が詳細な入札文書を提出し、6月に正式な視察団が日本にやってくる。詳細な分析の後に、11月、IRB理事会で開催国が決定されることになる。現在、日本協会は、入札文書作成のために奔走している。ここが最も大事なポイントになるからだ。W杯招致事務局には魅力的な入札文書作成に頑張ってもらいたい。

私は、W杯日本招致に賛成の立場をとる。昨年11月、日本代表は欧州遠征で大敗し、国内ラグビーも隆盛とはいかない。それでもW杯は来たほうがいい。停滞する日本ラグビーには刺激が必要だ。プロフェッショナルな大会運営を学び、世界トップレベルのコーチ、選手、レフリー、本場のサポーターを間近で見ることが、マイナスに働くことはありえない。W杯招致の機運を高めるために、招致委員会は、もっともっと日本国内のプロモーションにも力を入れるべきだ。現状では国内のプロモーションは皆無に等しい。

蛇足だが、シド・ミラー会長は、砂場と化した秩父宮ラグビー場のグラウンドコンディションについて質問を受けると笑顔になった。「問題ありません。どんな状況でも適応して戦うのがラグビーです」。環境を整えることばかり考えていると、原点を忘れてしまう。そう再認識させられる言葉だった。招致活動も、ラグビー文化の尊重が第一なのは言うまでもない。