BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

10th 日本代表欧州遠征

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日本代表の欧州遠征は3戦全敗だった。このうち、スコットランド代表とウエールズ代表との試合を現地で取材してきた。8−100と、0−98の大敗を眼前で見せられると表情が固まる。これまで18年ほど取材をしてきたが、もっとも嫌な時間だった。
相手がそう強いとも思えなかった。日本代表もチームとして機能せず、簡単にタックルを外されるなど、プレーに感動もない。次第に選手がかわいそうに思えてくる。このチームを生んだのは、日本ラグビー全体の問題だからだ。

最終的には選手を選んだのは、萩本監督であり、強化委員会なのだから、彼らの責任で片づければ簡単である。なかにはとても代表のレベルに達しない選手もいた。選手選考に疑問もある。しかし、小野澤、大畑のトライゲッターの負傷や、各チーム事情での参加辞退、学生のシーズンに配慮して大学生を選出しないなど、ベストメンバーを編成できない悪条件は重なった。また、萩本監督の任期は当初より1年とされながら、協会首脳の発言は、成績が良ければ2007年W杯までという曖昧さがあった。
これでは腰を据えたチーム作りもできない。経験の浅いメンバー(初選出7名)を加えた上に短期間の準備(直前合宿は5日間)でテストマッチに臨むという環境を作り出してしまったのは、日本協会自体の国際感覚の甘さなのである。

折しも、日本協会は2011年のW杯招致を正式に表明し、10月には各界からの識者を加えた招致委員会を発足したばかり。招致活動の被ったダメージは計り知れないが、その要因は自らの内にあるわけだ。なにより、100点負けで、国内ファン、メディアの日本代表への関心を失ったことは痛恨である。日本ラグビーに携わる関係者が、一人一人責任を感じ、それぞれの場で日本代表が強くなるためにアイディアを出して行かなくてはいけない。この期に及んで、沈黙は罪である。

ピンポイントで問題を絞れば、テストマッチはベストメンバーで戦わなくてはならないという一点に尽きる。スコットランドやウエールズが、格下の日本遠征に若手でやってくるのは当然だが、逆の立場の日本はすべてのテストマッチにベストメンバーを組むべきで、若手を起用する必要はない。若手の育成は、U19、U21のユースレベルでやるべきである。日本代表は、常にその時のベストで、今回のように主力に負傷者が出た時に、若手にチャンスが巡ってくるだけでいいのだ。まして、昨年W杯の大舞台で活躍した選手を代える必要はなかった。昨年のW杯スコットランド戦で先発したメンバーで、今回のスコットランド戦に先発したのは4名のみ。選ばれなかったほとんどの選手が今季もトップリーグで活躍している。例えば、長谷川、坂田、網野、豊山らのFW第一列に、辻、廣瀬のHB団である。彼らがいれば100点負けはなかっただろう。特にこのHB団は、日本の前に出るディフェンスの体現者である。年齢は関係ない。世界の強豪国の代表はメンバーを簡単には変えない。若い選手の実力が明らかにベテラン選手を超えたときに初めてポジションを与えるのだ。強豪国との対戦機会の少ない日本は、そうしないと国際試合の経験を蓄積できないのである。

最後に一つ。W杯開催国が決定するのは05年11月。名誉挽回のチャンスはある。来夏のアイルランド代表来征だ。同時期には全英&アイルランド代表のNZ遠征があり、ベスト編成での来日はあり得ない。勝つことは不可能ではない。ここにピークを持って行って、歴史的勝利を狙おうではないか。繰り返す。不可能ではないのだ。